靴作りにおいて、革包丁は単なる道具ではありません。
工場で靴を作る場合は、最初から材料や木型に合わせて設計されているため、必ずしも革包丁が必要ではないかもしれません。
しかし、私のような小規模・一品物の靴作りでは、革包丁がないと仕事にならないのです。
なぜ革包丁が必要なのか
1. 中底を作るため
中底とは、中敷きの下にある靴底の芯材です。
足幅に合わせて木型を補正した場合、一品物として作るしかありません。
革包丁があれば、足に合わせた中底を精度よく切り出すことができます。
足より大きい木型で作る場合は、あらかじめ抜かれた「パルプボード」を使うため包丁は不要ですが、木型補正した一品物では包丁なしでは中底を作れません。
もし中底が正確に作れなければ、靴全体のフィット感や履き心地も台無しになります。
2. パンプス用の硬い芯を加工するため
パンプスなどの中底には硬い芯材が入ります。
切れない包丁では加工できず、グラインダーで削ると踵や曲面が崩れ、木型補正の意味も失われます。
手作業で包丁を使うことで、木型通りの美しい断面を作れるのです。
既製品の中底は、抜型で抜いて作られています。
グラインダーで削っては、歪んだ中底ができてしまうので木型補正は活きません。
3. 手漉きのため
靴の表面や踵芯の段差をなくし、足あたりを整えるために革を薄く漉く作業があります。
手で漉くことで、機械では入り込めない部分にも対応でき、仕上がりの精度を高められます。
薄い革や柔らかい革も、革漉き機の設定が難しい場合がありますが、手で漉けばすぐに対応可能です。
4. 包丁を仕立てる技術が重要
革包丁は、単に研げば切れるようになるわけではありません。
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包丁の本来性能を引き出す研ぎ方
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足に合わせた中底や芯材を正確に加工する技術
これらは、靴作りの精度に直結します。
切れない包丁で作った靴は、見た目や履き心地に「違和感」として現れます。
逆に、本来性能を引き出した包丁を使えば、革漉き機がなくても家で靴作りが可能です。
靴作りに必要なのは機械ではなく技術
よく「グラインダーや革漉き機がないと靴は作れない」と思われる方がいますが、本当に必要なのは道具を使いこなす技術です。
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ミシンだけはあると便利ですが、
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それ以外の機械は「手作業の代用品」に過ぎません。
手で革を裁つ技術、手で漉く技術を習得すれば、どこでも靴作りが可能です。
当教室での指導
当教室では、以下を重視して指導しています。(プロコース)
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革包丁を正しく研ぎ、切れるようにする技術
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手での革漉き、芯材の加工、型紙作り
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ミシンを使って、家でも靴を作れる環境を整える
革包丁を使いこなすことが、履き心地の良い靴、見た目の美しい靴を作る第一歩です。
初心者の方でも、要望があれば革包丁の研ぎ方は学べます。