革包丁って、工場で作る場合は必ずしも必要ではないかもしれません。
すぐに組み立てていけるように、最初から合わせて設計されているので、
必要ではないのかもしれません。
私のような極小規模の作り手になると、必要。
無いと仕事にならない。
話にならない。
そう捉えています。
なぜなのか。
◆革の中底作れない。
中底とは、中敷きの下の底素材。
足幅に合わせて木型補正した場合、足幅に合わせて一品物を作るしかないから。
包丁があれば、一品物を作れるから。
足よりも大きい木型を使うならば包丁不要となる。
木型に合わせて作ってもらった「パルプボード」なる紙みたいな使う。
足幅の合っていない「ゆるい靴」は、足の裏の形に合わせて作った中敷きを差し込んだとしても、「ゆるい靴」になる。
木型を足に合わせた補正をしたつもりでも、中底を望ましく作れなかったら意味がない。
◆パルプボードの中底を作れない。
パンプス用の中底は、とても硬い芯を挟んで作られているため切れない包丁では加工できない。
既製品は、木型に合わせて抜かれたパルプボードが使われています。
小規模の私は、グラインダーで削るように思われやすいのですが、包丁で作ります。
グラインダーで削ると、踵の曲面が崩れて無くなってしまう。
削りすぎてしまい、木型の角と中底の角が同じ線上に作れないことが発生しやすい。
歪んだ中底ができてしまえば、木型補正なんて全く意味がない。容積のとおり釣り込めないから。
そういうわけで、グラインダーで加工は木型のとおりできないと思ってる。
木型に合わせて抜いた注文品は刃物で抜いているから断面が綺麗。
でも、足幅に合わせた補正をすると抜いて作れないとなる。
そうなると、足より大きい木型で作ることになる。
◆手漉きできない。
段差が出ないように、足当たりをよするために、革を薄く加工して合わせていきます。
そのとき、どうしても機械では入り込めない部分が出てくる。
それを手で漉きたいので、包丁が必要。
表から見て段差が強い。
凸凹を感じるなど、ドレスシューズ、パンプスなど作ると顔に出る。
◆踵芯を手漉きできない。
限りなくゼロに近づけた牛革で芯を作りたいとき、包丁が切れないと漉けない。
踵に段差がはっきり出てしまう。
◆柔らかい革のとき、革漉き機の設定が難しい。
設定しても、革が柔らかいため通すたびに不安定なときあります。
手で漉けば、すぐ処理できます。
切れないと、もっともっと作業場の不具合はあります。
包丁が切れるように、研げるようになるまでも時間かかる。
手漉きできるようになるのにも時間かかる。
覚えるのに簡単じゃないから、とても大変。
包丁の本来性能を引き出すように「研ぐ」は、特殊技術と思います。
覚えるのに簡単ではありません。
包丁の本来性能を引き出すことは、とても大事です。
でも、結局。
靴の形になっているのだから、「包丁は切れると整理できるでしょ」思われてしまう。。。
そんなことない。
切れない包丁で作った靴は、靴の顔に出る。
履いても出る。
私は、道具が良くなければ、良い靴作れないと思ってます。
「本来性能を引き出した包丁を仕立てること + 望ましい形に加工すること」
甘い仕立ての道具では、話にならないことを実感してきました。
なお、革包丁が切れると、革漉き機がなくとも靴を作れる環境になります。
グラインダーがないと駄目。
革漉き機がないと駄目。
そんなことありません。
どうも、そこを勘違いしている人が多い。
ミシンだけは、あった方が良いと思うけど。
機械など無くとも、靴は作れるのです。
手の代用品として、機械があるのです。
当教室は、革裁ち包丁しっかり切れるように指導しています。
ミシンを買ったら、家で作れるように指導しています。