一見シンプルなパンプスですが、足に合わせるとなると最も難しい靴です。
私は、ハンドソーンウエルテッド製法で紐靴を作るよりも、足に合わせたパンプス作りのほうが難しいと考えています。
1. パンプスの難しさの理由
紐がない
パンプスは紐がありません。
紐がないということは、甲を押さえる面がなく、足が抜けやすい構造になります。
ヒールが高い
ヒールが高いと、体重の加重位置が変わります。
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裸足の姿勢とは異なる
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足の形状や木型もそれに合わせて変化
足の個性
パンプスが合わない方の多くは、足に特徴、個性が強くでています。
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外反拇趾、内反小趾、偏平足など
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左右の形が違う場合も
これらの要素が、パンプス作りの難易度を大きく高めます。
2. やってはいけないこと 注意してください。
靴の納品時に「きつさの調整」として、中敷きの面を削ったり、凹ませたりするのは禁じ手です。
削ることで容積が増えるので、足にフィットしたと思ってしまいますが、やってはいけません。
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足裏の骨格アーチが崩れ、歩くたびに痛みが出る
10分持たずに歩けない気持ちになる -
足の容積は確保できても、足が持つ衝撃吸収する作用が失われる
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店内をそろそろと歩くと一見「足が収まった」「足が抜けない」と思えますが改悪です。
市販靴では駅まで歩ける方でも、このようなオーダー靴では数分で痛くなります。
私は生徒さんに、これを「良薬のふりをした毒」と教えています。
3. パンプス作りに必要な技術
パンプス作りには以下の技術が不可欠です。
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釣り込みの精度
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革を引きすぎてもデザイン通りに作れない
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引かな過ぎても甲が浮いてしまう
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左右の踵・履き口の高さ
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高さの不揃いは履き心地に直結
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薄く柔らかい革への対応
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紳士靴の厚い革のように強く引けない
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女性の足に優しい足当たりを作る必要がある
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型紙の精度
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薄い革では精度の甘さがそのまま形に現れる
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厚い革ならごまかせる型紙技術力でも、パンプスでは許されないので作れない
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作りの丁寧さ
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革の段差、ミシンのヨレ、叩きによる凸凹など
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見た目と強度を両立させる
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これらが揃わなければ、パンプスは完成しません。
紐靴が作れるからといって、パンプスが作れるとは限りません。
4. 手作り靴を見るときの注意
パンプスの写真を見るときには、次の点に注意してください。
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履き口の深さは左右で揃っているか
- つま先がどこか向いていないか
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デザイン通りの形になっているか
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粗雑さがないか
見た目だけで「美しい」と判断せず、履き心地や再現性を意識することが大切です。
5. 当教室の良さ
当教室では、パンプス作りに必要な技術で作ります。
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足に合わせた木型補正
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薄い革でも正確に釣り込む技術
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型紙の精度と美しい仕上げ
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履き心地を損なわない作りの丁寧さ
これにより、生徒さんは見た目も美しく、足にも優しいパンプスを作っています。

つま先に縦しわありません。足に寄り添っています。履き口までの深さ、左右合ってます。

つま先に縦しわありません。足に寄り添っています。履き口までの深さ、左右合ってます。

趣味コース 6.5cmヒール パンプス

趣味コース 6.5cmヒール パンプス

趣味コース 6.5cmヒール パンプス
まとめ
パンプス作りは、シンプルに見えて非常に高度な技術が必要です。
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足に合わせる技術
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木型補正の技術
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釣り込みの精度
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型紙の正確さ
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作りの丁寧さ
これらすべてが揃うことで、初めて履き心地の良いパンプスが完成します。


