ハンドソーンウエルテッド製法 すくい縫いの話

すくい縫いとは、細革を手縫いで縫い付ける作業。
ハンドソーン(手縫い) + ウエルテッド(細革)の作業です。

写真のように、中敷きの下にある素材「中底」へ段差を作り、靴の縁になる細革を縫い付ける作業を指します。
縫い付け方法を「すくい縫い」と言います。

写真では。
すくい縫いが、一定のピッチで強く締まって縫われていることが確認できます。
そして、縫いピッチも、望ましいピッチで縫われています。

注意したいのは。
細革が中底に縫い付けられていればいい。
縫い幅が広かろうが、狭かろうがあまり考えないで縫ってしまうということ。

すくい縫いには、望ましい縫い幅があります。
間延びした縫いを行うと、完成した後にハンドソーンウエルテッド製法の肝である
靴底交換するためのウエルト、中底が痛んでしまうのです。

適正ピッチで縫うのは一つの技術。
間延びせずに縫うことも一つの技術。
特につま先。
つま先周りを一定ピッチで、かつ締まった状態で縫うことは、とても難しい作業なのです。

つま先は、間延びした縫いをしてしまいやすい。
締まっていない縫いをしてしまいやすい。
縫えばいいという話ではないのです。

すくい縫いは、「緩み止めの技法」
「あや」をかけて縫います。

しかし、間延びした縫いでは、「あや」の意味がありません。

締まりの甘い縫いでは、緩み止めの技法が効果的に働きません。

歩いていて、何かに引っかかったとき靴底が本体から剥がれてしまう。
すくい縫いの糸が切れてしまう。
糸が切れると同時に、中底のリブも壊れてしまうでしょう。
靴底交換できる製法にも関わらず、資材が痛んでしまい交換できない状態になるかもしれません。

また。完成した姿では。
縫い糸が、コバと本体の隙間から顔を出すでしょう。
ウエルトも歪んで縫い付けられるので、本体との接するウエルトがうねうねして見えます。

必ず つま先周りに出現します。
縫い糸が見えるのも つま先。(ポツポツと何か見える)
ウエルトのうねうねも つま先。

つま先は、技術が表面化してしまう箇所と言えます。

ハンドソーンウエルテッド製法の工程をなぞったからと言って、靴としてできているかは別の問題としてあります。
縫い糸が顔を出すことも、ウエルトがうねうねと歪んで縫い付けられることも不適です。
丈夫に作らなくてはなりません。

工程を覚えるのではなく、どうしてこうやるのかの作業意図を考え、感じ、身に着けていくことが大切だと考え指導しています。