木型の話

オーダー靴を作る最初の作業は、足を測定します。
次、木型(きがた)という靴の形をした型に、牛革を貼り合わせて足に合わせて補正していきます。
木型は、靴のヒール高や形状によって変わり、まるで「足のための設計図」のような存在です。

たとえば、踵が高い木型はハイヒール、低い木型はバレエシューズやローヒールの靴になります。
ヒールの高さが1cm違うだけでも、足の収まり方や着地の安定感は大きく変わります。
1.5cmヒールの木型で7cmヒールの靴を作ろうとしても、足は無理な形で押し込まれてしまい歩けません。
整理すると、靴の高さと足の形はセットで考えなければならないのです。

また、男性と女性では足の形が違います。
同じサイズでも、女性用木型と男性用木型は設計が異なります。
24.5cmの靴でも、女性用を男性が履くのは難しいのです。

牛革を使用した木型の補正

足に合わせた木型補正をするとき、牛革を木型に貼り合わせながら、履く人の足をイメージしながら形を整えます。
そのとき、牛革ではない「柔らかすぎる補正資材」だと叩いたときに凹凸ができ、木型の形が崩れてしまいます。
そのため、引き締まった形を維持することができる牛革を使います。
叩いても凹まず、形をキープできるので、歩きやすい靴を作る上で欠かせません。

重ねて、セメント製法では、靴底を貼り合わせるときおよそ7気圧の圧力がかかります。
柔らかすぎる補正資材では、凸凹や形の崩れがおきてしまい、同じ木型で二足目を作ることができません。
昔から木型補正には牛革が使われてきたのは、、木型の形を守りながら、何度でも安定した靴作りができるからと言えます。

 
足に合わせて補正しています

趣味で作るときに意識してほしいこと

趣味で靴作りを始める方も、まずは木型の仕組みや役割を知ると作業がぐっと楽しくなります。

木型に沿って革を寄せていくと、靴の形が見えてきます。
自分の足が入っているのが分かる形が見えてきます。
木型はただの型ではなく、靴が足に寄り添い、歩く道具として機能するための設計図です。

趣味で靴作りを体験する方も、この木型のイメージを持ちながら補正すると、
完成した靴を履いたとき、フィット感や歩きやすさの違いをより感じられます。

「自分の手で、足にぴったり寄り添う靴を作る」喜びを、ぜひ体験してください。