デザインの再現性について

靴を作るのに木型に直接デザインを書いて。
そのデザイン線を写して。
写したものを紙に貼って。
それを、調整しながら作るのが型紙です。

立体の木型から得た情報を、平面に入れ込んで。
そして、また立体に載せるので「ヨレ・ズレ」が必ず発生します。
それをどのように解消するかは、作り手それぞれの手法で解消するものです。
解消する場所は、作り手全員が違うと思います。

靴教室での話。
例えば、木型に書いた絵 と 作った靴を見比べて。
何か再現されていない気がする。
作れない方は作っている工程に問題があって不細工になったと思っているのですが、 そこではありません。

そもそもで、問題発生の場所を読み違えています。
木型に書いた絵は、何かしらの見本を見ているはず。
その見本の読み取りが甘い場合が多いのです。

よく書けたと思っていても、「ここに何かがあると歩きにくくなる」など知りませんから、木型と足に応じて調整しなければなりません。

部分的に誇張、縮小することで、同じように見せるというテクニックも必要です。
強度不足、壊れやすさ、履きにくさなど、いろいろなことを木型・足に応じる理解が必要なのです。
そのため、初めてデザインする方は毎日履いている靴を横に置いても書けません。

こういう見方を入れるとどうか。履きやすいに影響しないか。歩けるのか。
そんなことを学びながら進めることで、市販の靴が自分の足に合うか合わないかの判断になると思ってデザインの勉強も必ず行っています。
生徒さんの周りの方にも良い影響があればいいなと思って、自分の足と靴の見方は大切にしています。

また、見本の写真は、細身で、つま先の形がAだった。
作る木型は、ぼてっとしていて、つま先の形がBだった。
読み取り甘いだけでなく、違う形で作ろうとしていること(木型選定ミス)でも、不細工化しやすい。
再現性が低くなります。

そういうときは、「こういう部分が違うから こっちの靴の顔に近づくよ。」、「この部分が邪魔しているから、こうした方がいい」と伝えることで、デザイン案を更に膨らませてもらってます。

そのうえで、型紙の「ヨレ・ズレ」を解消する技術を投入することでデザインの再現性を上げることができると思っています。
これらを整理してから、手を動かす作業に入ることがとても大切だと思います。

デザインの再現性が悪い靴、一つ一つが雑な靴は、「なんか手作り感ある靴になったなぁ」と感想がでる靴だと思えます。
「手作り感のある靴」と言うのは、「市販の靴との見た目の差が大きい」と言う意味でしょう。

友達に「靴作ったんだ。見て。」と言えるような靴にしてあげたい。
注意を促すこと、見本を見せること、分かりやすく伝えることなど、教える側が適宜行うことで改善できるものです。

最初のデザインの設計 + 型紙を作る技術 の二つが整理されないと、その後に始まる「実際に手を動かす作業」では引き戻すことはできません。

「手作り感」は否定するものではなく、それも一つの好印象です。
ただ、靴は歩く道具、地面と言う障害物だらけに触れながら使う道具です。
雑に作ったことで感じた「手作り感」は、望ましくありません。
雑なのは壊れやすいですからね。

作りが甘いための「手作り感は」駄目です。
靴は健康被害に直結しますから。
理解の無い木型補正、理解の無い資材選択、理解のな作業が「甘さ」を生み出します。

「手作り感」を望んでいないのに生ませてしまったならば、私の教え方が悪いと言えます。
せっかく作るのだから、永く履ける靴にしてあげたい。
自分で作った靴履いてから、足の裏のタコが消えたとか言わせてあげたい。