靴木型に革を寄り添わせる行為を「釣り込み」と呼びます。
市販品の靴は、特殊機械で釣り込んで作られます。
当店は、手釣り込みで作っていきます。
釣り込み作業に至るまでの工程から書いていきたいと思います。
まず、企画 → デザイン → 設計 → 型紙。
ここから、裁断 → 製甲(革の加工、ミシンかけ)。
そして、釣り込みとなります。
釣り込みの後は、底付け(靴底の取り付け) → 仕上げ(補色、磨く) → 出荷となります。
工程を見ると、釣り込みは出荷間近の作業です。
このことを強く認識して作業することを生徒さんへ伝えています。
生産性、コストなど、いろいろなことを踏まえて設計されます。
革の伸び、生産性など考えて裁断していきます。
壊れないように、足当たりに悪い影響がないように製甲されていきます。
これらを担当してきた方の思いがあるということです。
そして、「釣り込み」作業とは、これらを壊すこともでき、より良くすることもできる作業なのです。
革を引っ張りすぎれば、靴のデザインのとおりに仕上がらない。
革を引っ張りすぎれば木型を抜いた途端、靴の容積が確保できなくなります。
革をゆるく貼りつければ、靴の容積は管理できない増え方をします。
革をゆるく貼りつければ、靴のデザインのとおりに仕上がらない。
木型のとおりに寄り添わせることができなければ、靴の容積が確保できていません。
そうなると、
木型補正は全く活きない。
補正したことに意味がなくなる。
柔らかい革を使っても、きつく感じてしまう。
仮合わせの靴を作っても、参考にならない情報しか得られない。
設計した履き心地になることはない。
完成間近だけど、最初からやり直しになるかも。
と言えます。
釣り込みという作業は、設計を台無しにしてしまう恐れがある作業です。
だからこそ、お客様の悩みに応えられるよう技術向上が必要です。
手で引っ張る行為は、数値化できません。
数値化できませんが、一枚ごと違う天然素材である革に応じて引くことができます。
手で釣り込んだことで生み出す履き心地があると思っています。
ただ、革を引っ張るという作業ではないのです。
木型補正、革の選択を活かすためにも、技術向上が求められる作業です。