ハンドソーンウエルテッド製法 出し縫いの話

製法は、選択肢の一つでしかないので「ハンドソーンウエルテッド」を売りにしていない。
それがために、「あの人は、ハンドソーンできないんじゃない?」と思われやすいのかもしれない。

写真撮ったので、ハンドソーンウエルテッドについて書いてみたいと思います。

はじめに。
ハンドソーンウエルテッド製法とは、別名「複式縫い」と呼ばれます。
一つが、ウエルトを縫い付ける「すくい縫い」
一つが、コバの上を走る「出し縫い」
この二つの縫いがあるので、複式縫いと呼ばれるのです。

その出し縫いですが。
ハンドソーンウエルテッド製法であっても、出し縫いをミシンで縫ったものは、「9分仕立て」と呼ばれます。
出し縫いも 手で縫うと、「10分仕立て」と呼ばれます。

出し縫いの写真を載せます。

縫っている途中の写真。
コバの上に見える凸凹に関する説明をします。

写真では、コバの上に目安になる痕があるのが確認できます。

これは、ウィールと呼ばれる道具で凸凹の痕をつけているので「目付け」と呼ばれる縫い方です。
縫い目安を付けて 縫い進めているのです。

しかし、ハンドソーンウエルテッドとは、本来、目安無しの目検討で縫い進めていくものでした。

縫い穴の防水性を上げるため、熱いロウを「コテで突いて」入れることでできたV字の痕が結果として凸凹に見えたのです。

目突きコテを熱して、ロウをすくって、突っつくとV字に窪む。それが凹になる。
これが、「目突き」と呼ばれる縫い方になります。

既製品の紳士靴は、だいたい凸凹が入っていますが、縫い糸の上を走らないものも多くあります。

縫い穴にロウを入れてまで、防水性、堅牢性を上げることが求める必要がないくらい「接着剤」が効果的に使われていること。
出し縫いの糸が麻糸ではなく、より丈夫な糸が使われていることで不要なんです。
イミテーションの凸凹で問題ありません。

それが私は正しいと思います。
そのことで、手間が減り、価格を落とすことができるからです。

私は、量産でもなく、ごく少量なので。。。

いつも、目突きで作ってきたのですが。。。
この写真は、ウィールで目付けして作っています。

いまどきは、目突きでつくられたハンドソーンウエルテッドを ほぼ見たことありません。
そういうわけで、市場ではウィールで作った靴が人気のようなので真似することにしました。

コバに凸凹がどうして存在しているのか 分からない方が多いと思うので最初に説明しました。
防水性、堅牢性を求めた結果としての凸凹なんですよ。

次の写真は、出し縫いが終わった写真。

ハンドソーンウエルテッドに慣れていない人が縫うと、美しさ、丈夫さが失せる技術の話をします。

まず。
縫い糸が走るための目安の線など入れてませんが、淀みなく縫われています。

縫い糸が 一本の線でできています。
慣れていないと、一本の線になりません。

次に。
甲革と細革(ウエルト)のキワも直線化していて淀んでいません。

重ねて、ハンドソーンウエルテッドの「すくい縫い」の糸が顔を出していません。
縫い糸が緩んでいないことが確認できます。

キワが凸凹と淀んだり、すくい縫い糸が出てきたりすると。。。
壊れやすいし、糸も切れやすい。
ハンドソーンウエルテッドのメリットである「靴底交換」できることへ悪影響も出ます。

そして。

出し縫いの縫い穴を刺すときに出来てしまう痕。
「甲革へ 出し針の背中に押された痕」が凹になって出てきやすい。

「出し針の背中に押された痕」が凹になって出てくる場所は、ここ。

特に、先芯が入る場所(ストレートチップの場所)は凹が生まれたら もう治せない。

しっかりと凹の痕が見えてしまう。
黒ずんだような痕なんです。
1mmくらいの幅で、縦線の痕がついてしまう。

出し針の太さ1mmくらいの痕です。
ハンドソーンウエルテッド製法の手順を処理することと、望ましい縫いをできるかは別なのです。

ハンドソーンウエルテッド製法の技術力は、つま先見ればすぐに分かります。
技術が不足すると、出し縫い、すくい縫い、どちらの縫いも雑に表れます。

最後に、目突きで作ったハンドソーンウエルテッドの写真

完成しました。

内羽根 ストレートチップ セミブローグ

完成しました。

出し縫い

出し縫い 目安のウィール入れない。3cm11針

下の写真、先芯の入る部分に縦スジがついていません。

出し縫い

出し縫い 目安のウィール入れなくとも一定のピッチ。3cm11針入ってる。